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i氏山荘オーディオ訪遊記(第1話) [i氏山荘オーディオ訪遊記]

恐るべし平面バッフルとP-610

■序
場所はi氏山荘のオーディオルーム
夜も更けて日付が変わった午前1時すぎ。
二人の大人がもう何時間も、ああだこうだとやっている。
ガタガタ、ゴトゴト、それにキュルキュルと電動ドリルの音もする。
期待と予想を遥かに超えるいい感じになってきたのでやめられない。
16cmSPユニット平面バッフルの音場感、その自然な広がり感、臨場感、目の前で演(や)ってる感など、音響空間がすばらしく感動的である。
16cmのこんな柔なもので、耳を圧する大音量が飛び出すことに驚き、それでも破綻しない再生音の品位に感激する。
三菱ダイヤトーンP-610DB。
竹集成材平面バッフル。
ただしこのスピーカーシステムは構築途上であり、まだ数段は向上するだろう。
今回ようやく「基本形はこれでいける」と確信が得られた状況にある。
取りあえずのバラック設置であるが、それでも音源をとっかえひっかえ聴きまくるほど音楽が楽しい。
オーナーも私も、聴くのが嬉しくてしょうがない状態であった。
おそらくこの時、氏の脳裏には次のステップがイメージされ、耳にはその音が響いていたに違いない。
簡単に工作できるなら、今すぐ試みたい改造箇所もあったが、さすがにそれは明日やろう、ということになった。

深夜
静寂が支配する深い雑木林。
木の精の眠りを妨げる不逞な輩の、やかましい騒ぎもようやく収まる。
灯りを消した山荘の天窓から、黒々とした枝葉を縫って、ちらちらと星が見えていた。
「i氏山荘オーディオ訪遊記」は、この山荘の音空間の出来事を中心に綴ろうと思う。
山荘が舞台なので、たまにしか更新できないがお許し願いたい。
私がブログを開設するのはこれが最初であり、そのファーストライト (first light)の対象をi氏山荘に向けさせていただいた。
氏の勧めと、ブログや各種の発信・コミュニケーションツールの薀蓄(うんちく)を聞かせてもらい、ようやく決心した次第である。
ちなみにfirst lightとは、氏の第一の道楽(天文と望遠鏡)に敬意を払ったもので、天文台などで新望遠鏡が完成したときの、最初の試験観測のことである。


■山荘の音空間
広葉樹に囲まれた山荘のベランダに出て、梢を渡る風の囁きに耳を澄ます。
コンコンコンと遠くに啄木鳥(きつつき)の木を打つ音が、僅かなエコーを伴って聞こえる。
他に音はない。
時折、あちらこちらから、ポトッとか、カサッとか、突発的な単発音が届く。
落ち葉の上には沢山の団栗(どんぐり)が撒かれている。
自然に落ちた茶色玉の中に、先日の台風で吹き飛ばされたのか、青い玉が新鮮な色合いを添える。
もう9月も下旬。
「今まで経験したことのない」豪雨や猛暑の夏も、ようやく衰えた2013年の初秋である。

余談であるが、屋根のひさしの裏側の板に啄木鳥が穴を開け、その中に大きな蜂が巣を作ったとのこと。
穴は2階屋根の非常に高い位置にあり、それをいかなる方法で塞いだか、氏の苦労話がおかしかった。
こういった雰囲気の山荘の2階、間仕切りを開け放った40畳ほどのフロアの半分をオーディオルームが占めている。
この空間なら、音も好き勝手に飛び回ることができるだろう。
今回の訪問の目的は、氏が数年前から構築中のスピーカーシステムの試聴である。

i氏山荘SP全景(ト済).jpg
<写真1:山荘のスピーカーシステム>
**今回山荘に到着した時点の、あれこれ変更する前のbefore状態。今回この配置等を少し変更し「これでいける」感を共有**


■進化の原点
もう1年以上にもなるが、前回訪問した時の話を少しさせていただきたい。
この部屋で、ああだこうだ言いながら、大小何種類かの箱型スピーカーを聴いた。
密閉、バスレフ、大小、いろいろある。
箱型以外にも、氏は以前から平面バッフル型のよさを語っており、いくつかの試作品があちこちに置かれている。
その中で「なにこれ」と、思わず口を衝いて出るようなものが大容量密閉箱30cmウーハーの天板の上に乗っていた。
ちょとした悪戯で作ってみたような「板切れバッフル16cm4連スピーカ」である(写真1のウーハーの箱の上に片側だけ見える)。
幅30cmもない板に、スピーカ穴を4つ一列に開けただけのもの。
ユニットは16cmダブルコーン、作りはシンプルの極みであり、コーン紙を指先て触れると、いかにも薄く軽量であることが分かる。
DS-16F(写真2)。
ユニットにメーカー名は記されていないが「ダイドーボイス」らしい。
単価はえらく安い。
普通に考えれば、オーディオファイルが相手にするようなものではない。
どんな音が出るのかお楽しみ、の感覚で音を出してみる。
「板切れ」の置き方などあれこれ試みながら、大容量密閉箱30cmウーハーとの2Wayとして聴く。
自身の不覚と反省をこめて、「オーディオを探求する者、形や価格、風評など、あらゆる偏見に囚われてはならない」。
なんとその板切れからは、実に新鮮、活き生きとして明瞭自然な音場がワッと広がった。
音楽を楽しむ装置として、ここにあるスピーカーシステムの中では、この板切れ平面バッフルが「No.1」である。
多少耳につく音域はあるが、いっぱいに広がる音場間は何にも勝る。
先に聴いた箱型には、大汗をかいた労作や、少なからず散財したもの、定評のユニットを装着したものなど、氏のいろいろな思い入れがあるに違いない。
でもやはり「激安16cmユニットの板切れ」がベストである。
氏が平面バッフルを基本形にしよう、と決めたのはこの時らしく、それが今回の訪問で聴く竹集成材平面バッフル実現のきっかけとなっている。

ダイドーボイス16cmと団栗.jpg
<写真2:ダイドーボイス16cmダブルコーンSPユニット>
**i氏山荘のスピーカーシステムの基本形を決めるきっかけとなったSPユニット**

(第1話 おわり)
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コメント 2

distagon25

AudioSpatial さん
ブログオープン、おめでとうございます。
愛読させて頂きます。

by distagon25 (2013-10-27 13:46) 

AudioSpatial

distagon25さん、ご訪問、ありがとうございます。
i氏山荘の平面バッフルSPは、以前の状態でも驚きの音響でしたが、どこまでいくのか、私も楽しみです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

by AudioSpatial (2013-10-27 16:22) 

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