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(第1回)OTARI BPL-10「円盤再生機」 [オーディオルームのコンポーネントたち]

友人から「ブログ表紙のターンテーブルは何だ」と聞かれました。
回転機部分とトーンアームの正体はすぐに分かったそうですが、BPL-??というのは初めて見るとのことでした。
そこで新しいブログテーマ、「オーディオルームのコンポーネントたち」を立てました。
その第1回に、表紙のターンテーブルを回します。
これにも奇跡のような出会いがありました。
なお、「コンポーネントたち」としたのは、オーディオ部屋のシステムとケーブルで結ばれているオンライン機器を対象に、という意味合いです。

容姿に一目惚れ
当ブログの表紙に載せたターンテーブル。
この造形がすばらしい。
Technics SP-10 MK-ⅡAの清楚なデザインと調和したコンソールの形。
これほど美しいと感じるコンソール型ターンテーブルを見たことがなかった。

(拡大できます)
BPL-10プレイ中(拡大用).jpg
<写真1:ブログ表紙の元写真>
**職業病のせいか、VUメーターの類が付いていると安心する。顔色や血圧、脈拍といった、機器の基礎体調を知るにも役立つ**

取扱い説明書にはOTARI BPL-10 円盤再生機とある。
DENONもそうであるが、プロ用ターンテーブルの正式名称は、昔から「円盤再生機」である。
出会いのきっかけはカタログであった。
10年ほど前、偶然目に留まったOTARI BPL-10「円盤再生機」のカタログ。
当時、私が使っていた愛機と同じTechnics SP-10MKⅡAが、そのコンソールにみごとに収まっているではないか。
その瞬間、BPL-10が自室に置かれ、VUメーターが元気よく振れているイメージが浮かんだ。
願望の投影である。
OTARIは名の知れたプロ用・業務用の音響機器や諸設備を中心としたメーカーである。
そのOTARIがターンテーブルをラインアップしていたとは知らなかった。
しかし放送局や録音スタジオ、劇場などからターンテーブルが姿を消してすでに久しい。
現在も製造を続けているわけはなく、在庫などあろうはずもない。

それあります
一目惚れした時期が絶妙であった。
ある日、好青年のOTARIの営業マンを見かけたので、このBPL-10の話をしてみた。
・・なんといきなり「信州のOTARIの工場にある」という。
私はてっきり、機種か何かを勘違いしていると思った。
ターテーブルなど各メーカーとも、もう何年も前に製造を打ち切っている。
今さら購入するところなどはない。
でも実際に「在庫」があるらしい。
今どきあるはずがないものが、なぜ製造工場にあるのか。
その経緯(いきさつ)を簡単にいうと、何年か前、あるところからBPL-10を受注し製造した。ところが納品する段になって話が頓挫した、ということらしい。
工場も、宙に浮いた1台を、いつまでも保管しておくわけにはいかないだろう。
結局、白馬に乗ったおやじが、信州に幽閉されていた美女を、危機一髪のところでさらっていく、というストーリーで、在庫問題は一件落着した。
OTARI BPL-10の最終最後の1台であった。

OTARIのTT&TR(縮小ト).jpg
<写真2:BPL-10。右隣りはOTARIのテープレコーダーBX-55>
**なぜか私は、ターンテーブルでドーナツ盤をかけるのが好きだ。そもそもドーナツ盤が乗って回っているターンテーブルの姿が格好いいと思う。BX-55は2トラック録音/再生と、4トラック再生ができる。どちらもたいへん使い勝手がよい**

Technics SP-10MKⅡA or MKⅢ
我が家に納まったBPL-10には、Technics SP-10MKⅡA(ターンテーブル)と、AUDIO CRAFTのAC-4400(トーンアーム)、カートリッジはこの手の機器のお約束DL-103が付いていた。
AC-4400のダンプ用オイルは、輸送時の漏れを考慮して注入されていない。
また、SP-10MKⅡA本体に付いている大きな四角のSTART/STOPボタンは「はめ殺し」になっている。
そうしないと、あの位置では危険極まりない。
ターンテーブルには同MKⅢのチョイスもあり、またアームは、製造時期によって数種類の変遷があったらしい。
当時すでにMKⅡもMKⅢも、何年も前に製造を打ち切っているので、チョイスなどあり得ないし、新品のMKⅡAが乗せてあることすら奇跡に近い。
OTARIさんには申し訳ないがAC-4400は取り外し、お気に入りのDynavectorのDV505を取り付けた。

プロ用機器は最高に使いやすい
レコードプレーヤーやテープレコーダーのように、手先で細かな操作を行うような、慣れや熟練を要する機器は、プロ用機が圧倒的に使いやすい。
我々道楽者は、「静かに針を下ろす儀式」などと言っているが、彼らの職場にそんな遊び心はない。
素早く、確実に操作できる。
もたもたも、失敗も許されない。
緊張の現場で使う機器は、とにかく使い勝手がよくなければ採用されない。
ボタンやスイッチ類の配置、それらを押したとき、動かしたときの指先のフィーリングなども非常に重要であり、メーカーの「程度」を知る尺度になる。
百戦錬磨、戦場切り覚えで到達したのがプロ用コンソールの形であり操作性である。
もちろん我々道楽者が使っても、最高に使い勝手がいい。
ターンテーブルの手元で、ライン出力等の各種操作ができるのは実にありがたい。
そして私は毎回、道楽者の「儀式」も厳かに執り行なっている。

BPL-10の上のミミ(縮小ト済).jpg
<写真3:夜はニャン子にも開放されるオーディオ部屋>
**侵入を阻止すると、入り口のドアの前で何人かがピケを張る。本当に困りものであるが解決策がない・・**


DENON DL-103の真価
誰もがご存知のDL-103。
1965年に、当時の日本コロムビア(デンオンはその傘下)とNHK技術研究所の共同開発により誕生したカートリッジである。
一つのカートリッジを生み出すために組織された開発体制の規模は、海外を含めて空前絶後であったといわれている。
私はNHK技研の隠れファンである。
彼らの、音声・映像・無線・通信等を核とした放送技術の研究開発が、各種産業の振興に果たした功績は、戦前戦後、そして現在もなお継続して計り知れないほど大きい。
さてDL-103であるが、技研が深く関わった作品である手前、まことに恐れ多いことではあるが、どうやっても納得できる音が出ない。
一言でいうと、細部の表情が聞こえず、聴く喜びが湧いてこない。
ターンテーブル、トーンアーム、シェル、フォノイコライザー、ステップアップトランス等々、また、兄弟親戚筋のDL-103R、SR、xx・・・とっかえひっかえ、諦めては再挑戦を繰り返した。そしてギブアップした。
これはこういうものだ。

BPL-10で聴いたDL-103。
体も頭も固まってしまった。
よく聴くLPからマスターテープの香りがする音が出た。
もちろんそのLPのマスターテープなど聴けるものではないが、その香りの雰囲気は想像できる。
DL-103を開発した面々は、きっと、レコードをカッティングする元になるマスターテープの音を聴き、それを耳の基準に置いて、そのテープから作られたレコードを試聴しながら、がんばったのだろう。
その時、そう感じた。
これは言うまでもない当たり前のことかもしれないが、その時、ハッとそう思った。
もう一つ思ったことがある。
国内メーカーの「円盤再生機」は、国内使用では100%、DL-103(あるいはそのモノラル型)が使われる。
その他のものが使われることは、よほど特別な場合以外は決してない。
だからフォノイコライザーを含む信号増幅部は、DL-103に特化した作り込みをしているに違いない。
つまりDL-103で試聴を繰り返し、求める音が出るようにチューニングしていると考えられる。
BPL-10で聴くDL-103の音を、私はそう理解した。
当ブログの別テーマ「i氏山荘訪遊記」における三菱ダイヤトーンP-610も、このDL-103も、
その真価が引き出された時、今までの体験や思い込みを遥かに超えた音響を浴びせられ、しばし固まる。

コンソールの重さと構造が肝
BPL-10のSP-10MKⅡAの音は、私の愛機のものと少し違う。
これも同じ理屈であり、プロ用ならではの作りのコンソールに収めて、つまり然るべき基台に、然るべき方法でセットして、初めて引き出される性能なのだと思う。
まずは重量が物を言うらしい。
全重量はほぼ100Kgある。
意外なのは、ターンテーブル本体が取り付けられているのは四角の分厚い板であり、それが硬めのダンバー材を介して、コンソールの基台に、ただポンと乗せられているだけである。
剛構造ではないところに、何かあるに違いない。
BPL-10のコンソールの構造等については、いずれ、ターンテーブルに関するテーマなどを立てて、当日記に綴りたいと思う。
(ちなみに、ブロク表紙のトーンアームに付いているカートリッジはDL-103ではありません。)

プリンちゃんと211アンプ(縮小ト済).jpg
<写真4:寒いときはこの周りがやけに暖かいニャー>

(第1回 OTARI BPL-10「円盤再生機」おわり)

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永井 龍二

はじめまして、永井と申します。
ブログ拝見させていただきました。
OTARIの商品は、業務器なので、安心できますね。
私も、実はBX-55を所持しております。
メンテナンスをしたいのですが、調整ポイントがわからないので、もしサービスマニュアルをお持ちでしたらご教授していただきたいと思いましてコメントさせていただきました。

by 永井 龍二 (2015-04-30 17:50) 

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