SSブログ

いとし子(第1回)SPが鳴る単管フォノアンプ [オーディオのいとし子たち]

■序
人にはそれぞれ好きな物、惹かれる物がある。
どこに惹かれるのか、何に魅せられるのか、他人には分からない、理解されない。
定番道楽の書画骨董、レコード蒐集あたりなら、家人は認めなくても、たいていの人は苦笑しながらも理解を示す。
鉄道のダイヤおたくだって、たくさんいる。
しかし「真空管」や「その回路」ともなると、もはや絶望だ。
少なくとも近辺には、その人も理解者も絶対にいない(と思う)。

(写真はすべて拡大できます)
FG-650とSL-10(縮小)(ト済)DSC7102.jpg


<写真1:オーディオ部屋の小さなテーブルに置いてあるTechnics SL-10(左)と、その脇に置いた今回の日記の主役「ポータブル電蓄」(右)>





私のオーディオ部屋の小さなテーブルには、TechnicsのSL-10が「飾って」ある(オンライン待遇なので音は出る)。
泣く子も黙ってほしい、誰もがみんな知ってほしい、LPレコードのジャケットと同じ大きさのレコードプレーヤー。
あまたのジャケットサイズ型のあるなかで、比肩するものなし。
空前絶後の最高傑作機である。
上ぶたに触れた瞬間、それを開ければなおのこと、第一級品のみが発する「質感」のオーラを感じることができる。
と、私は思っているのであるが、事あるごとに「小さなテーブルに、そんなもの置いて邪魔でしょ」とくる。
世間はどうせこんなものである。

当カテゴリー「オーディオのいとし子たち」は、そのような、他人にはなかなか分かってもらえない、魅力や魔力をもったオーディオの品々に、スポットライトを当ててみたいと思います。
その第1回は、ナショナルのポータブル・レコードプレーヤ、FG-650です。

■この電蓄がオーディオ人生の悟りの境地か
松下電器「ナショナル」ブランド。
正式な製品名は「FG-650ポータブル・ホノグラフ」。
昭和の高度成長期のころ、お母さんが子供に「魔法使いサリー」などのドーナツ盤をかけて聞かせたポータブル電蓄である。
石ではなく真空管が使われていることから、1960年代前半のものではないかと思われる。
この電蓄、あまり使ってもらえなかったのかもしれない。
全体がとても綺麗で、50年を経たとは思えない容姿である。

さて、このポータブル電蓄は、真空管式ゆえに私が授かった「いとし子」である。
予期していなかったことであるが、さらにありがたいことに、ひときわ輝くオーラが内部に隠されていた。
この電蓄を入手してすぐ、内部の点検整備をしておこうとケースを外したところ、裏ぶたの内側に、名刺2枚のほどの大きさの回路図が貼り付けてあった。
MT管1本でスピーカーを鳴らす、この電蓄のフォノアンプの回路図である。


FG-650回路図(縮小)(ト済)DSC_4653.jpg


<写真2:電蓄の裏ぶたに貼ってあった回路図>
**紙の染みが50年を経た年月を物語る。ちょっと見づらいが、よーく、信号や電源の流れなどを追いながら見ていただきたい。電源トランスは単巻タイプで、1/2の所から45Vを取り出している**





この図を見て驚嘆した。
美しい!。
なんと洗練された回路だろう。
何一つ無駄がない。
最小限の部品で、必要十分な機能と性能を実現している。
見ればみるほど素晴らしい。
もう感心するばかりである。

5極管1本と、電源を含めてたったこれだけの部品で、クリスタルカートリッジの出力を増幅し、スピーカーをガンガン鳴らす。
それもかなりまともな、しっかりした音質である。
この電蓄、メカ部もエレキ部も、すべて健全であり、たぶん新品の時のままの音が出る。

ちなみにクリスタルカートリッジとは、ロッシェル塩結晶のピエゾ効果を利用した圧電型カートリッジである(セラミック型もあるが)。
その発電素子は、振幅比例型(素子の変形の大きさ、つまり針先の変位に比例した電圧が発生する)であるため、出力は概ねRIAAカーブと逆の周波数特性になり、イコライザーが不要である。
おまけに出力電圧が大きく、およそ500mV(0.5V)ほどもあるので、プリアンプも不要である。
弱点は湿気に弱いとされているが、この電蓄のものは劣化が認められない。

さて、使われている真空管は、7ピンMT管の50EH5
High μの低周波電力増幅5極管
プレート電圧 135V
ヒーター電圧 50V
プレート損失 5W
最大出力 1.4W
こういった素性である。
入力が500mVであれば、これ1本でスピーカーをガンガン鳴らすことができるだろう。


FG-650中身全景(縮小)DSC_4625.jpg


<写真3:ポータブル電蓄の中身の全景>
**スピーカーユニットの作りが、かなりしっかりしている**






FG-650アンプ部アップ(縮小)(ト済)DSC_4625.jpg


<写真4:フォノアンプ部のクローズアップ>
**右端にあるのはセレン整流器**






私はこういった有形・無形の「もの」に惹かれる。
簡潔で無駄がない。
虚飾など一切ない。
必要最小限の実質のみで勝負する。

いいですね。
そういう生き方をしてみたい。

(「オーディオのいとし子たち」(第1回)SPが鳴る単管フォノアンプ おわり)a
nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 1

斉藤清司

yahooオクシヨンで2コ手に入れたこれのつかいかたはプリアンプの後ろにし16倍の利得で大型真空菅845ドライブ845でイコライザーで鳴らしてます
by 斉藤清司 (2017-02-17 20:46) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。