いとし子(第3回)トリオ6BQ5シングルアンプ [オーディオのいとし子たち]
■トリオW-10トライアンプ
これ、私のとびきりの「いとし子」です。
私の「アンプ」や「チュナー」の原点。
これには強いノスタルジーと、特別の想いがあります。
これは1961年発売のトリオW-10「ステレオ・トライアンプ」。
トリオは現在のKenwoodの前身であり、「トライアンプ」とは、「AM/短波」と「FM」のチュナー、それに「ステレオアンプ」を一体にしたもので、このネーミングはトリオの発案と言われている。
オール真空管式であり、半世紀50年を経ているが、コンデンサーの全点を交換しただけで、現在も健全に働いている(消耗品である真空管は別)。
(写真はすべて拡大できます)
<写真1:トリオW-10 ステレオ・トライアンプ>
**アンプ部は、6BA6 ⇒ CR結合 ⇒ 6BQ5(EL84)シングル。6BA6、6BQ5とも5極管の一般・普通の使い方をしている。フォノイコライザーは搭載されていない。チュナーのAM/短波部とFM部は、ともに分離独立しており、FMはモノラルである**
美しく青きドナウ
スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」の冒頭部、猿人が空に投げた骨が、カット切替えで宇宙船に変わるシーンがある。
道具(骨)を手に入れた猿人が、そこを出発点として何百万年後に宇宙に進出したことを象徴する名シーンである。
私のオーディオ史において、初めて手にした増幅器W-10。
たぶん1962年であったと思う。
そしてそれは30年をかけて「最終アンプ」に変わった(当ブログの別カテゴリー「原器を目指した最終アンプ」に登場する)。
何百万年と比べれば、30年など「変化なし」に等しい(「最終アンプ」は1992年生まれ)。
事実そのとおりであり、W-10の音を聞くと、「最終アンプ」も、また、スピーカーなどのオーディオの主要コンポーネントも、「本当に進化しているのか」と問わねばならない。
W-10と「最終アンプ」、出てくる音響は、もちろん比較にならない。
しかし家内に聴かせれば、「これ1台あればいいじゃないの」(W-10が)。
つまり非常に客観的に突き放せば、両者に大した違いはない、と言わざるを得ない。
おおかたの人には、その程度の違いなのだ。
<写真2:こういった感じがあの時代のトリオの共通したデザイン>
**左側がFM、右側がAMのダイアル文字板。現在はFMが選択されているので、左側の文字板の照明が点いている。芸が細かい**>
AMラジオの音がとてもいい
(「あの時代の、ああいった作りの」、が前提であるが)W-10の音はとてもいい。
私も円通寺坂工房も、「最終アンプ」には相当な情熱を注いだ。
可能なかぎりの物量を投入した。
ところがどうだ。
W-10に使われている部品は、現在の品質や性能と比べれば、どれも並品以下ではないか。
出力トランスなど、幼児のげんこつのように小さい。
真空管のソケットも、ペラペラのベーク板に穴が開いているだけである(しかし今までに接触不良になった記憶がない)。
回路図を見ると、トーンコントロールやら、左右のバランス調整やらのCやRやボリュームなどが、ゴテゴテと付いていたりする。
そのW-10の音が、とてもいい気持ちにしてくれる。
ちなみにW-10のきれいに清書された回路図を「ラジオ工房」さんのHPで見ることができる。
[ラジオ工房]ホーム→[資料室(真空管ラジオの広告 価格、TR BCLラジオのカタログなど) ]→[2 技術資料]→このどこかにW-10の回路図あり。
<写真3:マジックアイ6E5の緑の発色と目玉の存在感がたまらなくいい>
**チューニングダイアルを回して、目的の放送局に同調すると、マジックアイの扇形の陰が閉じる方向に狭くなる。これを見ながらダイアルを同調点の中心にピタリと合わせることができる。マジックアイの蛍光物質の発光寿命は定格使用では大変短い。私はターゲット電圧を180V前後に下げて長寿命化を図った**
「いい気持ち」の続きであるが、まずAM放送の音がすばらしい。
W-10で聴くAMラジオの音は本当にいい音である。
1962年、私は高校生であり、静岡県の田舎町で毎晩、ラジオ関西の電話リクエストを聴いていた。
ラジ関の送信アンテナは、日本列島の向きに指向性をもたせてあるので、遠くでも受信できる、という話があったが本当だろうか。
ダイアル目盛りの左端いっぱいぐらいの低い周波数であった。
当時のラジ関の「電リク」は、この手のリクエスト番組の草分けであり、「明石の鈴木さんから、加古川の佐藤さんと須磨の亜紀ちゃんへ・・」といったように、曲をプレゼントする形式になっていた。
後年、オールディーズの黄金時代と呼ばれるようになった60年代、米欧の名曲が大量に生まれた特異な時代のポピュラー音楽をW-10で聴いた。
(今現在も、PCに収めたMyライブラリーをしょっちゅう聴いている)
この頃から、AMラジオはW-10で聴くのが最高と思っていたが、今もそう思う。
FM放送はモノラルであるが、とてもリラックスできる音であり、これもたいへんいい。
トリオという会社は、元々がAMや短波ラジオ用の高品質のアンテナコイルやIFT類のメーカーであった。
AMやFMチュナーは得意中の得意である。
受信感度、IFTの帯域幅(選択度)、音質といった、それぞれ相反する要素のさじ加減を熟知していたに違いない。
W-10は、トリオが総合オーディオメーカーへと成長していこうとする時代の初期の製品であることから推して、当時の最高のスタッフが心血を注いだ傑作機なのかもしれない。
<写真4:W-10のシャシー上の部品配置>
**ベークライトのボビンに綺麗に巻かれたアンテナコイル、バリコン、アルミ色に輝くIFT、その間に挟まれたMTタイプの真空管。オーディオ少年憧れの出力管6BQ5は後ろの出力トランスに挟まれている。電源トランスの右は整流管6CA4。シャシーもトランス類もサビサビですが、いいですねー。ちなみにトリオのアンテナコイルやIFTは、オークションでもプレミアがついて高値らしい**
トリオはこの後、数機種の真空管式AM/FMチューナー付きアンプを出しつつ、1962年には日本初のオールトランジスタ・アンプTW-30を発売する。
そして1964年にTW-80、1966年にはパワー段をメサ型シリコントランジスタに置き換えたTW-80Aを出す。
そして業界は、従来の真空管アンプに迫る半導体アンプ時代に突入していった。
当ブログの別テーマ「甦れSTAX ELS-8X」の第2話の写真1:に写っているアンプは、私のW-10の後継機となったTW-80Aである。
音響的ハイエンドを可能なかぎり追求した「最終アンプ」と、日本のオーディオ産業黎明期の力作。
どちらも、それぞれ相応のいい音がする。
私の耳に刷り込まれている「いとし子」W-10の音、赤い夕日が校舎を染めた時代の音である。
私はこの音が好きだ。
(いとし子 第3回 「トリオ6BQ5シングルアンプ」 おわり)
これ、私のとびきりの「いとし子」です。
私の「アンプ」や「チュナー」の原点。
これには強いノスタルジーと、特別の想いがあります。
これは1961年発売のトリオW-10「ステレオ・トライアンプ」。
トリオは現在のKenwoodの前身であり、「トライアンプ」とは、「AM/短波」と「FM」のチュナー、それに「ステレオアンプ」を一体にしたもので、このネーミングはトリオの発案と言われている。
オール真空管式であり、半世紀50年を経ているが、コンデンサーの全点を交換しただけで、現在も健全に働いている(消耗品である真空管は別)。
(写真はすべて拡大できます)
<写真1:トリオW-10 ステレオ・トライアンプ>
**アンプ部は、6BA6 ⇒ CR結合 ⇒ 6BQ5(EL84)シングル。6BA6、6BQ5とも5極管の一般・普通の使い方をしている。フォノイコライザーは搭載されていない。チュナーのAM/短波部とFM部は、ともに分離独立しており、FMはモノラルである**
美しく青きドナウ
スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」の冒頭部、猿人が空に投げた骨が、カット切替えで宇宙船に変わるシーンがある。
道具(骨)を手に入れた猿人が、そこを出発点として何百万年後に宇宙に進出したことを象徴する名シーンである。
私のオーディオ史において、初めて手にした増幅器W-10。
たぶん1962年であったと思う。
そしてそれは30年をかけて「最終アンプ」に変わった(当ブログの別カテゴリー「原器を目指した最終アンプ」に登場する)。
何百万年と比べれば、30年など「変化なし」に等しい(「最終アンプ」は1992年生まれ)。
事実そのとおりであり、W-10の音を聞くと、「最終アンプ」も、また、スピーカーなどのオーディオの主要コンポーネントも、「本当に進化しているのか」と問わねばならない。
W-10と「最終アンプ」、出てくる音響は、もちろん比較にならない。
しかし家内に聴かせれば、「これ1台あればいいじゃないの」(W-10が)。
つまり非常に客観的に突き放せば、両者に大した違いはない、と言わざるを得ない。
おおかたの人には、その程度の違いなのだ。
<写真2:こういった感じがあの時代のトリオの共通したデザイン>
**左側がFM、右側がAMのダイアル文字板。現在はFMが選択されているので、左側の文字板の照明が点いている。芸が細かい**>
AMラジオの音がとてもいい
(「あの時代の、ああいった作りの」、が前提であるが)W-10の音はとてもいい。
私も円通寺坂工房も、「最終アンプ」には相当な情熱を注いだ。
可能なかぎりの物量を投入した。
ところがどうだ。
W-10に使われている部品は、現在の品質や性能と比べれば、どれも並品以下ではないか。
出力トランスなど、幼児のげんこつのように小さい。
真空管のソケットも、ペラペラのベーク板に穴が開いているだけである(しかし今までに接触不良になった記憶がない)。
回路図を見ると、トーンコントロールやら、左右のバランス調整やらのCやRやボリュームなどが、ゴテゴテと付いていたりする。
そのW-10の音が、とてもいい気持ちにしてくれる。
ちなみにW-10のきれいに清書された回路図を「ラジオ工房」さんのHPで見ることができる。
[ラジオ工房]ホーム→[資料室(真空管ラジオの広告 価格、TR BCLラジオのカタログなど) ]→[2 技術資料]→このどこかにW-10の回路図あり。
<写真3:マジックアイ6E5の緑の発色と目玉の存在感がたまらなくいい>
**チューニングダイアルを回して、目的の放送局に同調すると、マジックアイの扇形の陰が閉じる方向に狭くなる。これを見ながらダイアルを同調点の中心にピタリと合わせることができる。マジックアイの蛍光物質の発光寿命は定格使用では大変短い。私はターゲット電圧を180V前後に下げて長寿命化を図った**
「いい気持ち」の続きであるが、まずAM放送の音がすばらしい。
W-10で聴くAMラジオの音は本当にいい音である。
1962年、私は高校生であり、静岡県の田舎町で毎晩、ラジオ関西の電話リクエストを聴いていた。
ラジ関の送信アンテナは、日本列島の向きに指向性をもたせてあるので、遠くでも受信できる、という話があったが本当だろうか。
ダイアル目盛りの左端いっぱいぐらいの低い周波数であった。
当時のラジ関の「電リク」は、この手のリクエスト番組の草分けであり、「明石の鈴木さんから、加古川の佐藤さんと須磨の亜紀ちゃんへ・・」といったように、曲をプレゼントする形式になっていた。
後年、オールディーズの黄金時代と呼ばれるようになった60年代、米欧の名曲が大量に生まれた特異な時代のポピュラー音楽をW-10で聴いた。
(今現在も、PCに収めたMyライブラリーをしょっちゅう聴いている)
この頃から、AMラジオはW-10で聴くのが最高と思っていたが、今もそう思う。
FM放送はモノラルであるが、とてもリラックスできる音であり、これもたいへんいい。
トリオという会社は、元々がAMや短波ラジオ用の高品質のアンテナコイルやIFT類のメーカーであった。
AMやFMチュナーは得意中の得意である。
受信感度、IFTの帯域幅(選択度)、音質といった、それぞれ相反する要素のさじ加減を熟知していたに違いない。
W-10は、トリオが総合オーディオメーカーへと成長していこうとする時代の初期の製品であることから推して、当時の最高のスタッフが心血を注いだ傑作機なのかもしれない。
<写真4:W-10のシャシー上の部品配置>
**ベークライトのボビンに綺麗に巻かれたアンテナコイル、バリコン、アルミ色に輝くIFT、その間に挟まれたMTタイプの真空管。オーディオ少年憧れの出力管6BQ5は後ろの出力トランスに挟まれている。電源トランスの右は整流管6CA4。シャシーもトランス類もサビサビですが、いいですねー。ちなみにトリオのアンテナコイルやIFTは、オークションでもプレミアがついて高値らしい**
トリオはこの後、数機種の真空管式AM/FMチューナー付きアンプを出しつつ、1962年には日本初のオールトランジスタ・アンプTW-30を発売する。
そして1964年にTW-80、1966年にはパワー段をメサ型シリコントランジスタに置き換えたTW-80Aを出す。
そして業界は、従来の真空管アンプに迫る半導体アンプ時代に突入していった。
当ブログの別テーマ「甦れSTAX ELS-8X」の第2話の写真1:に写っているアンプは、私のW-10の後継機となったTW-80Aである。
音響的ハイエンドを可能なかぎり追求した「最終アンプ」と、日本のオーディオ産業黎明期の力作。
どちらも、それぞれ相応のいい音がする。
私の耳に刷り込まれている「いとし子」W-10の音、赤い夕日が校舎を染めた時代の音である。
私はこの音が好きだ。
(いとし子 第3回 「トリオ6BQ5シングルアンプ」 おわり)
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