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いとし子(4)6BQ5ブースター付き電池管ラジオ [オーディオのいとし子たち]

これ、ただの「電池管ラジオ」ではない。
いざ有事の際には、内臓の6BQ5三結シングルのアフターバーナー砲が炸裂する。
それだけではない。
砲の狙いは手動ではあるが、最新鋭電子照準器6E5が、緑の目玉を光らせアシストする。
その上、もう一つの声量指示器6E2の薄緑のバーが、音の強弱に合わせてピコピコダンスを踊って応援する(何の役にも立たないが)。
秘密兵器のはずであったがシースルー。
装甲はアクリルでも、内臓SPの音はけっこういい。
ちょっと言い遅れたが、アフターバーナーが発する膨大な熱は、連動のターボファンが吸引し外気に放散する。

どや。



これ、自分で作りました。
笑ってやってください。
いや、お笑いくださるな。

(写真はすべて拡大できます)
電池管正面(縮小)DSC_7553.jpg




<写真1:これ、2年ほど前に作った電池管ラジオ>
**千葉のマザー牧場から連れてきたミルク牛がAFN(昔のFEN)あたりを聞いている**








この電池管ラジオ、動機はいたって真面目なんです。
311地震の後、節電に心がけねば、との思いから、低消費電力の電池管ラジオを思いつきました。
NHKのAMラジオを、日常、トリオのW-10(いとし子(3))でよく聞いていましたが、いくら音がいいからといって、140Wもの無駄な熱を、のべつ幕なしに発生させておくのはまずいでしょう。
そこで名案!、そうだ、「電池管ラジオ」を作ろう。
となったわけです。
目的が「節電の気持ち」ですから、「アフターバーナー」やマジックアイなどには、それぞれの電源ON/OFFスイッチを付け、常時はもちろんOFFにしてます。

電池管ラジオ
電池管式ポータブルラジオのファンは多い。
そのデザインの独特の雰囲気には、一瞬にして遠い昔にタイムスリップするようなノスタルジーを呼び起こす。
裏ぶたを開けたときに見える電池管やB電池などにも郷愁が漂う。

トランジスタラジオの足音が聞こえてくる。
実用的な商品としてのトランジスタラジオの出現は1954年であり、日本の東京通信工業(現在のソニー)も1955年に商品化に成功した。
電池管ラジオはその後急速に絶滅に向かい、英国ポップスのヒット曲、アルマ・コーガンの「Pocket Transistor」の流行とともに姿を消した。
しかし幸いなことに、その当時大量に生産された電池管が多種、今もたくさん生存しており、入手も比較的楽であるのはまことに喜ばしい。


電池管4本(縮小ト済)DSC_7582.jpg


<写真2:本機で使用した4本の電池管>
**外観や大きさなどは一般のMT管と大差ないが、消費電力は劇的に小さい。左から1R51T41S53S4。用途は下記**





電池管とは
電池管とは、乾電池で動作するように作られた真空管である。
大抵のものは、ヒーター電圧1.4V、B電圧67.5Vで動作し、それぞれの電圧を供給するための乾電池が用意されていた。
1.4V(1.5V)は現在のものと同じであり、普通のポータブルラジオには容量の大きな単1タイプを使った。
67.5VのB電池(電池管のB電源用)は、かなり大きな長方形の羊羹(ようかん)のような形をしていたが、他に用途がほとんどないので、電池管ラジオと運命を共にした。

本機のラジオの方式は「4球スーパー」(4球スーパーヘテロダイン方式)。
戦後のラジオの、ごく一般的で当たり前の構成である。
本機に使用している4本の電池管とそれぞれの用途、そのヒーター電圧/電流は、

周波数変換      1R5、1.4V/25mA
中間周波増幅    1T4、1.4V/50mA
検波&低周波増幅 1S5、1.4V/50mA
電力増幅       3S4、1.4V/100mA(67.5V動作で出力は160mWほど出る)

であり、4本合計で僅か1.4V/225mAである。
つまり4本の電池管のヒーター電力は、合計なんと「0.3W」。
ちなみにお馴染みのMT管、12AU712AX7のヒーター電圧/電流は、6.3V/300mAであることから、「4本合計1.4V/225mA」が、いかにすごい省エネを達成していたかに驚く。
これほどの「偉業」を成し遂げた電池管開発史には、数々のドラマがあったのではないかと思う。

作った電池管ラジオの形
本機の視覚的なデザイン。
モチーフは、正面に大きなバーニアダイヤルとマジックアイ。
日常的によく聞くラジオであるから、スピーカーは前面、いい音で。
それらを暖めていたらこんな形が生まれた。

電池管R斜前(縮小ト済)DSC_7512.jpg


<写真3:全体的なデザインはこんな形>
**前面と背面と底面のアクリルは5mm厚。後ろ上部の屋根に乗っているのは排熱用のファン。6BQ5ブースター稼動時に連動して回る**




電池管Rマジックアイアップ(縮小ト済)DSC_7555.jpg




<写真4:マジックアイ6E5
**「いとし子」(3)のトリオW-10に使われているマジックアイと同じ。その当時のマジックアイの大定番であった**







電池管自作キャビネット図面(横・上)106.jpg


<図面:材料を相手に工作を始める前に、あれこれ心に描きながら書いた図面>
**たとえおもちゃっぽいものでも、とにかく図面をごまかさず正確に描いておくことが第一、ということが身にしみて分かりました。今回の大反省です**





電池管ラジオ部はキット
電池管ラジオの基本部分はキットを利用した。
キットを組み立て調整し、電源さえ供給すればラジオが鳴る完全キットである。
筐体や6BQ5周り、2種類のマジックアイ、排熱ファン、それらの電源などは、私のおバカなお遊びなので、もちろん自己調達オプションである。

電池管横(縮小ト済)DSC_7543.jpg
<写真5:本機内部の様子>
**アンテナはフェライトコアのバーアンテナ。したがって置く方向によって感度が変わる。
大きなバーニアダイヤルにバリコンの軸が直結されている。
水平に挿された4本の電池管は、バリコン側の左から1R5・・3S4、先に紹介した並び順である。
底面には出力トランスと3つの電源トランスが乗っている。
最後部に垂直に立っているのが6BQ56E2**



6BQ5ブースター
外部スピーカーを接続し、いい音で聞きたい時のために、パワーブースターを組み込んだ。
ヒーター電力が大きすぎるが、他に適当な手持ちの球がないので6BQ5にした。
三極管結合にしたのは、回路が簡単になるからであり、音質の問題ではない。
プレート電圧は230V程度なので、最大出力はたぶん1Wちょっと、というところだろうか。
出力トランスは、6BQ5三結に適合するそこそこのものを見繕い、電池管の出力管と共用できるようにした(負荷インピーダンス5KΩ端子を使った)。
6BQ5の隣に立っている、音の強弱に反応して緑のバーがピコピコ動く球。
6BQ5に連動するお遊びのレベルメーター、6E2には何の意味もない。
その6E2をここに付けた「バカさ加減」を分かってくれる人は、冷や・・、いや、暖かく「バカだねー」、とか「アホやな」と言ってくれる。

この6BQ5の音、写真の右手に見える小さな出力トランスでも、けっこう気持ちよく聞ける。
「いとし子」(3)写真1のALTEC MODEL19を鳴らすと、大抵の方はAMラジオの意外な音のよさに驚く。


電池管背面(縮小ト済)DSC_7568.jpg



<写真6:背面から見た6BQ5ブースターと隣のマジックアイ6E2
**6E5との頭が揃うように、6BQ5のソケットはシャシーから少し沈めてある。右上のスナップSWはチューニング用マジックアイ6E5の電源ON/OFF。右下はブースターと6E2の電源ON/OFF。下中央の外部SP端子の上のSWはSPの4Ω/8Ωの切り替え**








排熱ファン
このラジオ、電池管だけで内臓スピーカーがガンガン鳴る。
決して悪い音ではない。
普段はどんな番組でも、この音なら文句はない。
また普段は電池管だけで聞いているので、「冷却」や「積極的な通風」などは考慮する必要はない。
しかし6BQ5ブースターをONにすると、ヒーターだけでも6.3V/0.76A(4.8W)の熱が発生する。
当初は底板と天板に、適当な通風孔を開けておけばいいと思ったが、とんでもない見込み違いであった。
本機のような小さな空間では、強制空冷が必須であることが分かった。
そこで急きょ、取ってつけた格好になったが、小さなDCファンを6BQ5の真上に乗せた。
DCファンは高周波のノイズが発生する。
AMラジオの周波数帯にも、そのノイズのスペクトルが広がっており、チューニングダイヤルをゆっくり回していくと、何箇所もその妨害波が受信される。
対策は、低電圧駆動、低速回転、ノイズフィルターの挿入、この3つである。
本機には5VのDCファンを、安定回転が確保できる程度の電圧で駆動し、小型のノイズフィルターを入れている。

電池管Rファン(縮小ト済)DSC_7536.jpg



<写真7:6BQ5ブースターの冷却ファン>
**DCファンの駆動電源は、同じ箱の中に組み込んだ。ファンの動作確認用として、その3端子レギュレータの取り付け穴に、ブルーLEDを入れ込んだ**






この6BQ5ブースター付き電池管ラジオ。
内部の配線も美しく束線するはずであったが、そううまく段取り通りにはいかない。
あっちをやり直し、こっちの間違いを直し、などを繰り返しているうちに、きれいに束線どころの話ではなくなってしまった。


「第一級品のみが発する「質感」のオーラ」を感じるメーカー品もいいけれど、拙い腕で作った自作モノも、特別な愛着があっていいものですね。
アクリル板を切ったり穴をあけたり、憂鬱になるほどやりました。
実はここで覚えたアクリル加工のノウハウが、「甦れSTAX ELS-8X」の発音ユニットの修理工作に大きく役立っています。
発音ユニットにアクリルは使われていませんが、ここで身についた加工の「技能」がものを言ったわけです。
オーディオを極めるための、プラスチック板と電動工具の「六十の手習い」でしょうか。


(いとし子(4)6BQ5ブースター付き電池管ラジオ おわり)ÿ
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