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i氏山荘(5)圧巻ASHIDAVOX、755E GOLDEN8 CD408 403A 他を圧倒 [i氏山荘オーディオ訪遊記]



ASHIDAVOX(アシダボックス)8P-HF1。
「ダイナミック型フルレンジスピーカーの世界的傑作」程度の賞賛では、とても足りない。
まさに「超」を付けるべき傑作と見た(いや、この耳で確かに聴いた)。
i氏山荘のオーディオ部屋の、平面バッフルに取り付けたいくつかの著名ビンテージ・スピーカー。
この試聴環境において、ASHIDAVOX 8P-HF1は圧巻であり、他のすべてを圧倒した。

なぜこのASHIDAVOXが「マイナーな傑作」で終わったのか。
高く評価したオーディオ評論家はいた。
しかしそれがなぜ、「幻の傑作」などと言われる経過を辿ったのか。
数量が出なかったのか、生産が間に合わなかったのか?
発売は1957年、その頃はまだ日本のオーディオ環境は貧しく未成熟であった。
早く生まれすぎたのかもしれない。
しかし、かなりの長期間、市場にあったはずである。
当時のオーディオ・ジャーナリズムは、どのような反応をしたのだろうか。

ダイナミック型フルレンジの「音質世界一」のユニットがどこかにあるとしよう。
ASHIDAVOX 8P-HF1は、それに勝るとも劣ることは決してないだろう。
Maide in Japan。
使われているのは、コーンの最適素材を追い求めて辿り着いた日本古来の美濃紙。
この純日本madeの「世界に冠たる」はずであったスピーカーユニットが、なぜ埋もれたのか。
なぜ埋もれさせたのか。
まったく残念であり不可解である。

しかしASHIDAVOX 20cmフルレンジが、山荘に用意されたいくつかの錚々たる「世界の名器」を、下品な表現ではあるが「ぶっちぎり」の差で圧倒した事実。
そして、このスピーカーの素晴らしさをよく知っている方々が、現在、少数ながらも厳として存在すること知り、多少は溜飲を下げた次第である。
いまだからこそ、オーディオ環境が整った現代であるからこそ、聴く人にこのスピーカーユニットの秀逸さが分かるのかもしれない。


感動の幕開けは満天の星
ゴールデンウイークに入った4月の末、夜9時前。
道は思ったより順調で、予定より早く山荘到着。
助手席から枯れた芝に降り立ち、反って背を伸ばす。
おお!すごい。
視界には、思わず息を呑む光景が私たちを出迎えてくれた。

満天の星ぼし。
林に囲まれ、頭上の一角だけが開けた天空は、白い微細な粒子を撒き散らしたような星屑で埋め尽くされていた。
無数の星というより、もはや白い粉が薄く撒かれているように見える。
このような光景を見たのは何十年ぶりであろうか。

そして天頂を少し下ったあたりに、驚くほど赤く輝く火星があった。
赤い!
火星って、こんなにも赤いのか。
都心を離れた郊外でも、火星の赤みは誰にもよく分かる。
しかし、このような赤い色に見えることはない。

標高1,100mほどのi氏山荘の空。
無窮をゆびさす北斗の針が天高く舞い上がり、感動の天体ショーが今回の訪問の幕開けであった。


前回訪問時の興奮、まず三菱ダイヤトーンP-610DBを聴く
コーヒーとお菓子でドライブ疲れを癒すのもそこそこに、2階のオーディオ部屋に上がった。
今回の2階は、写真のように、前回の日記「i氏山荘(4)」の状況よりもバッフルが増えて、取り付けられているスピーカーユニットの数も増えている。
どうやらi氏は、近頃、内外のビンテージの20cmをいくつか集め、なにやら思案している様子である。


*1DSC_9970(文字).jpg*1DSC_9967(文字).jpg
              <写真1:今回の各ユニット試聴用の平面バッフルの配置>
              **TANNOYの口径の謎については後段で説明あり**


前回の訪問では、竹集成材バッフルに取り付けた三菱ダイヤトーンP-610DBの鳴りっぷりに驚嘆した。
このユニットから出るはずがないほどの大音量と、それでも破綻しないすばらしく素直な音質、それに雄大な音場と明確な定位に夢中になり、CDをとっ替えひっ替え聴きまくったものであった。


スピーカーは、鳴らし方により、発揮できる性能に大きな違いが生じる
50年ほど昔のことであるが、P-610は、私が最初に手に入れたスピーカーユニットであり、学生時代はそれを薄型の「標準箱もどき」に入れて聴いていた(「甦れSTAX ELS-8X(第2回)」の写真1に、その箱の一部が写っている)。
P-610はかなり長く聴いていたので、素性はそこそこ分かっているつもりであったが、ここでの体験は、結局、P-610について、何も分かっていなかったことを思い知らされることになった。

私の反省であるが、上記の太字のことは肝に銘じておく必要がある。
もちろんこのようなことはスピーカーの初歩であり、誰もが知っている常識である。
しかし、ここで鳴っているP-610と、私の鳴らしてきたP-610と、同じP-610のユニットの音であるとは誰も信じない。
かなりの「耳」の持ち主でも、信じられないだろう。
それほどの違いが出る、ということである。


メインスピーカー選びのためのバッフル仮配置
この配置には問題があるかも・・。
2階のオーディオ部屋に入ったときの第一印象。
写真1のように取り付けられたスピーカーの全体配置を見て、左右の両端が白木のバッフルで塞がれていることに、何となく「閉塞感」があった。
というのは、前回、P-610DBやその他のスピーカーの音場の広がりや定位の素晴らしさに驚いたときの配置は、下の写真2の状況である。
バッフルの配置の変遷写真は、前回の「i氏山荘(4)」に載せたが、その前回の写真3Ver.1が、下の写真である。
前回の訪問時に、竹集成材バッフルを、ああだこうだと配置がえをして、「とりあえずのベスト」とした位置がこれである。
両脇が新しいバッフルで塞がれている前回の日記の写真3Ver.2とVer.3は、写真を送ってもらっただけで、私はまだ聴いていない。


*SP変遷2_image.jpg


<写真2:前回の訪問時、「とりあえずのベスト」としたバッフルの位置>
**平面バッフルの左右にも広く空間があることに注目**






前回の訪問時、この配置の平面バッフルの、あまりにも素晴らしい音の広がりと定位の「謎」は、バッフルの背面放射の音が、後ろの壁や床・天井に反射して、それが抵抗なくリスナーの耳に届いているからだろう、と推察していた。
それが今回の配置では、両側が塞がれている。
中央のリスニングポイントの椅子に沈むと、音を出す前から、一種の圧迫感のようなものが感じられた。
さあ、P-610DBから音が出た。


広がった音場と甘くなった定位
私が持ち込んだ聞き慣れたCDの音が、オーディオ部屋いっぱいに広がった。
「満ち満ちる」という感じであり、あそこのスピーカーから音が出ている、という感覚がまるでない。
このような「広がり感」は想像していなかったが、定位は思ったとおり曖昧になり、ピンポイントにならない。
やはり推測していたとおり、「定位」には、背面の音の反射が重要な要素になっているのだろう。

ただし、いまここで話していることは、スピーカーの再生音のかなり高度なレベルのことであり、先の「Ver.1」の状態のときの定位感を知っていて、それを基準にしての評価である。
オーディオファンが初めてこの席に座れば、このままでもおそらく驚きの再生音であり、音場であろう。
いずれにしろ、スピーカーユニット単体の評価に支障がある問題ではない。


いよいよ全ユニットの試聴開始
さて、前回の訪問で素晴らしい音響を聴かせたP-610DBをしばらく鳴らし、これをレファレンスにして耳慣らしと感覚の較正を行った。
フルレンジ・ユニットの20cmが7本、25cmが1本、16cmが3本、いよいよ試聴開始である。


*3DSC_9987.jpg*3DSC_9956.jpg
            <写真3:今回試聴した各ユニットが取り付けられたバッフルの表・裏>


25cmの1本は、TANNOY Monitor HPD/315/8と銘板に印刷されているが、奇妙なことに25cmである。
バッフルの表側と裏側の様子は、下の写真3であり、そのTANNOYのユニットの最後部の銘板は紛れもなく正規のもので、デザインも正規「TANNOY Monitor HPD/315/8」とあった。
このユニットは、TANNOYの小型スピーカーシステム「EATON」から、i氏が自ら取り外したものであり、何も手は加えていないという。
製造工程の何らかの間違いなのか、何なのか、まったくの謎である。


試聴で分かったこと 世間の「評判」どおりではない
これらの内外の著名ユニットの試聴は実に楽しく、二人でi氏のCD、私のCD、様々なジャンルを聴きまくった。
私は今回、「ここぞ」とばかり、試聴の際のレファレンスにしているCDをたくさん持ち込んだ。

そこで分かったこと。
「定評」は当てにできない。
ALTEC 755Eはこのように素晴らしい。
TANNOY同軸25cmはこの音色が他にはない良さ。
Richard Allan NEW GOLDEN EIGHTはこの鳴り方が絶品。
それぞれの著名ユニットには、古くから「このユニットの音はこうだ」のように、「定評」のようなものがある。
そして音色は違えど、どれも魅力ある素晴らしい音のユニットだと言われてきた。
私も、「そういうものだろう」と思っていた。


スピーカーユニットの真の性能を聴く唯一の方法は
あくまでi氏山荘の写真1の平面バッフルでの試聴であるが、各ユニットの音は、昔から言われていた「定評」、そしてその評判から、私が想像していた音とはかなり違っていた。
各種のユニットの中には、ある容量の密閉箱に入れたり、指定されたバックロードをかけたりすることを前提に設計されたユニットがあるかもしれない。
そのようなユニットは、平面バッフルでは本領を発揮できない可能性もあるだろう。
しかし平面バッフルには、箱に入れるよりも、はるかに平等な試聴ができるメリットがある。
それぞれの「箱」固有の様々な「クセ」(音響的パラメーター)にくらべ、平面バッフルの「クセ」は圧倒的に少ないと思われる。
なお、平面バッフルの取り付け位置による差異も心配であったが、実験の結果、その違いによる再生音への影響は問題になるレベルではなかった。


試聴の音量は大き目で
そしてここでの試聴は、かなり大きな音である。
ある程度の大きな音を出さなければ、「音」の機微を聞き取ることはできないし、ユニットの真の能力を知ることはできない。
音量を上げていくと、耳につく付帯音が出てくるとか、明らかに歪っぽくなるユニットがいくつかあった。
もちろんユニットのビビリなどの不良ユニットの話ではなく、オーディオに興味がない人には、おそらくわからないほどの違いのことを言っている。

i氏山荘の体験から、「広い部屋」、「平面バッフル」、「大き目の音量」。
この3つの要素が、ダイナミック型スピーカーの試聴に最適な条件ではないかと思える。
この試聴環境下で各ユニットは、逃げも隠れもできない誤魔化しようのない状況に置かれる。
これがそれぞれの「裸のユニット」の、真の性能を聴く唯一の方法ではないかとさえ思える。


「評判」とちがうじゃない
今回のバッフル配置での試聴は、私は始めてであるが、当然ながら、この試聴用バッフルを自力で作り上げたi氏は、すでに十分聴きこんでおり、各ユニットの評価は済んでいる。
しかしそれは口にしない。

夜も更けて、01時を回った。
標高1100mの山中、4月末でもまだまだ肌寒い。
一通りも二通りも十分に聴き、試聴の結論はとっくに出ている。
「定評」があり、オークションでも高値がつくユニットが、まったくの期待外れであったりすることに、いちいち驚いてはいられない。
先の段の小タイトル「試聴で分かったこと 世間の「評判」どおりではない」の意味がこれである。


松下電器Technicsの「げんこつ」が意外
今回試聴した各ユニットの「特別な一つ」を除き、今後自分が使うスピーカーとして、どれか1つを選ぶ。
とすれば、私はTechnicsの「げんこつ」を手許に置きたい。
たいへん素直でありバランスもいい。
大音量では、少し何か限界のようなものを感じるが、今回の各ユニットの中では「迷うことなく」この松下電器20PW49Sを選ぶ。


*4DSC_9983.jpg



<写真4:とてもいい感じで印象に残った「松下20PW49S」ゲンコツ>






さて、今回試聴した海外の著名ユニットが、意外にも評判どおりではなかった。
ただし、先にお断りしたように、あくまでここの環境における平面バッフルでの試聴である。
何らかの箱に入れ、別の環境で鳴らせば、また別の話になるだろう。


圧巻、圧倒、圧勝、ASHIDAVOX
今回の試聴において、ASHIDAVOXの前に、各種著名ビンテージ・スピーカーは色を失った。
それぞれのユニットの、いい点・悪い点などを比較して・・、などと比べている状況ではなかった。
今日の日記の冒頭に、品の悪い言葉ではあるが、と断った「ぶっちぎり」であり、その他のユニットの評価や比較など意味がないほどの圧巻であった。
冒頭の繰り返しになるが、なぜこれほどのユニットが埋もれているのか。
まちがいなく、この手の20cm前後のビンテージスピーカーでは、世界の超一級品であり、真のオーディオファンには、きっと高く評価されるに違いないユニットである。


*5DSC_9975.jpg*5DSC_9976.jpg
*5DSC_9932.jpg*5DSC_9941.jpg
                      <写真5:ASHIDAVOX 8P-HF1>
**背面の写真のコーンをよく見ると、紙の表面の状態が少し観察できる。エッジ部(フィックスド・エッジ)は繊維が粗になっており、向こうの光が透けて見えている**


この8P-HF1は、とにかく音が際立って明瞭である。
自然で、素直で、バランスがいい。
そして絶え入る微弱音から、鼓膜を圧し、窓ガラスをビリつかせる最強音まで、何の苦もなく簡単に出る。
弦楽器の微妙なニュアンス、ボーカルのリアル感、アタックの弾ける反応、大オーケストラの重厚な響き、20cmでは出るはずのない深くて厚い低音。
高域も、不足というほどの不満は感じない。
私ならツイーターはいらない。

ASHIDAVOX 8P-HF1から、本当に信じがたい音が再現された。
実体験の私でさえ、信じがたいユニットであり音である。
まして、この話をブログで見ただけで、にわかに信じられる話ではないだろう。
しかし真実であり、実話である。


ASHIDAVOX 20cmフルレンジスピーカーの秘密
ASHIDAVOXのHF1シリーズには、ここでの20cm(8P-HF1)と16cm(6P-HF1)の2種類があった。
国の内外を問わず、他のどのユニットにもない顕著な特徴は、「コーン紙」が圧倒的に軽いことである。
16cmの6P-HF1ではコーン質量1.3g、振動系実効質量2.9g。
20cmの8P-HF1ではコーン質量2.7g、振動系実効質量5.3g。
とある。
ビンテージものの20cmSPの中で、「超軽量」と言われているコーン質量が5g程度。
現代SPの軽量クラスが10g程度なので、ダントツの軽さである。


奈良時代から伝統の軽くて強い美濃和紙を採用
この常識を覆した軽量コーンが実現できたのは、その素材にある。
ASHIDAVOX 6P-HF1、8P-HF1のコーン紙は「美濃紙」である。
美濃和紙。
美濃の国、現在の岐阜県において、奈良・平安の時代から生産されていた、古来より最高級と珍重されてきた和紙である。
漉(す)き方に特徴があり、一般的な縦揺りに、横揺りを加えた独特の複雑な漉き方により、繊維がむらなく整然と絡み合い、「柔らかくて強い」紙になるという。
軽い、柔らかい、強い。
この特徴を持つ紙を、スピーカーのコーンに漉き上げ、最適な磁気回路を与えたのが6P-HF1、8P-HF1である。
コーンは、エッジを含めて一体成形(フィックスド・エッジ)であり、エッジ部は光が透けて見えるほど繊維の密度が粗に漉かれている。

もちろん、コーンが軽ければいい音が出るわけではない。
しかし私は、いいスピーカーの条件として、「コーン紙の質量」と「振動系実効質量」がともに極力小さいこと、が最大の要素ではないかと思っている。
その上で、最適な磁気回路を設計する。
いずれにせよ、美濃紙コーンを採用することにより、世界の超一級の20cmフルレンジ・スピーカーユニットが誕生したことは事実である。


取説に「低音再生能力は30センチを上廻る性能です。」とある
写真6は、今回試聴した8P-HF1に同梱されていた「取扱い説明書」を写真撮影したものであり、不鮮明であるが、参考までにお見せしたい。
その「周波数特性について」の項目に、「低音再生能力は30センチを上廻る性能です。」と書かれている。
このような「タワゴト」は、誰もが誇大広告ならぬ「誇大説明文」と思って読み飛ばす。
『8P-HF1のエフゼロ(最低共振周波数)は45Hz、その点のQが0.56であり、25Hzからの低音再生ができ、他のウーハーの及ぶところではない』云々。
確かにエフゼロやそのQ値は、20cmでは驚異的である。
しかし30cmや他のウーハーに勝つ、と言ってしまうと、これはもはや「大ボラ」と言われてもしかたがない。
ところが・・。


*アシダボックス説明書1(ト).jpg*アシダボックス説明書3(ト).jpg
*アシダボックス説明書4(ト).jpg*アシダボックス説明書5(ト).jpg





            <写真6:ASHIDAVOX 8P-HF1に添付されていた取扱い説明書>


説明文は真実を語っていた
しかし、この説明文は真実を語っていた。
「他のウーハーの及ぶところではない」などは言葉の綾として、まったく信じがたい低音が、この20cmから湧き出てきた。
この不思議な現象を、私は初めて体験した。
30cmのウーハーから出る低音に、勝るとも劣らない音量の、深い低音が本当に出る。


ダイナミック型スピーカーファン必読の「JBLが書いた解説書」
この不思議な事実は、あり得る話であることを解説した興味深い資料がネットにある。
JBLのサイトであるが、ダイナミック型コーンスピーカーについて、原理や構造、使いこなし方まで網羅した、非常に分かり易くて丁寧な解説が、図解で載っている。
ダイナミック型スピーカー・ファンには「必読」と言っていいだろう。
JBLのホームページの下にある「JBLテクノロジー解説|JBL by HARMAN」の項目には、「JBLコーンユニットの基本構造」から「インピーダンスとアンプとの組み合わせ」までの5項目がある。
その「低音再生能力」の項目(下記URL)に目を通していただきたい。

http://jbl.harman-japan.co.jp/about/tech.php?id=4

「[4] スピーカーシステムの低音再生能力について」の下の「■大口径システムへのこだわり」という小タイトルの部分である。
そこには、

(上記URLから一部引用)
『小口径システムには小口径システムなりの低音の表現があり、設計やチューニングの巧みさから、大きさ(小ささ)を感じさせない豊かな低音を再生するシステムもあります。』

というくだりがある。
「低音再生には大口径システムが有利であることは物理的事実であり、JBLは大口径スピーカーにこだわっているが、小口径でも、豊かな低音を再生できるシステムもある」と言っている。
その豊かな低音を再生できる小口径スピーカーの極め付けが、まさにASHIDAVOX 8P-HF1である。

i氏は、今後のバッフルの「本設置」の計画に、低音はどうやらウーハーを使わずに8P-HF1だけで行こうとしている気配がある。
「これだけ(低音が)出るんだからいらないでしょう」などと言っている。
まあ、8P-HF1を本番用の平面バッフルに取り付け、そのバッフルのみを最良の位置に配置してから、低音・高音を補足する必要があるかないか、ゆっくり聴きくらべればいいだろう。


翌朝
いろいろな小鳥の鳴き声が、微かに聞こえてくる。
少し曇っているようであるが、空は明るい。


*7DSC_9923.jpg*7DSC_9927.jpg
            <写真7:オーディオ部屋の天窓から。ようやく芽吹いた木々の梢>



昨夜は02時頃まで8P-HF1に夢中であった。
i氏から「凄いです」とは聞いていたが、聴いた音は想像を超えていた。
せっかく苦労して集めた銘ユニットの聞き比べもそこそこに、関心は8P-HF1の一点のみ。

メインにするスピーカーユニットが、あれこれ迷うことなく決まってしまったのは楽でよかったが、どうも「不条理感」が残る。
繰り返しになるが、なぜこの超傑作スピーカーユニットが、「知る人ぞ知る」などの属性を付けて語られるのか。
性能のよいものが、必ずしも商売上の勝者にはならないことは世の常である。
私もよく知らない古い時代のことであるが、まことに残念な話である。

そんなことをボンヤリ考えながら起き出し、まず機器の電源を入れる。
コーヒーを一杯、そしてすぐさま、各ユニットを鳴らしてみる。
やはり8P-HF1は「圧巻」である。
その後の会話は、各ユニットの試聴話しではなく、8P-HF1で聴く自分の好きな曲やアーティストの「押し売り」になってしまった。
なにを聴いても楽しい、素晴らしい。
クラシックがどうの、ジャズがどうの、ボーカルがどうのといった、合う合わないなど、まったく意味はない。
8P-HF1はそういう鳴りっぷりであった。



後日談
20cmユニット取り付け本番用の、竹集成材バッフルを発注したとのこと。
もうそろそろ出来上がる頃かもしれない。

今回訪問時の、各種スピーカーユニット試聴のためのバッフル配置については、両脇が塞がれていることに、何となく閉塞感があったことを、先のどこかの段で書いた。
この件について先日、i氏からうれしいメールが来た。

ところで、ご指摘のことをやってみました。
両脇のバッフルを取り去り、アシダが付いているバッフル1枚だけにし、さらに床上げをしました(つまり、元の位置です)。
何と、前回より圧倒的にクリアーで臨場感が出ました。
ご推察通り、後ろからの音が大きく影響していたのですね。
ありがとうございました。
というわけで、また聴いてもらわなければなりません(笑)。

次の訪問時には、晴れて20cmユニット本番用の、新たな竹集成材平面バッフルを聴くことができるだろう。
とても楽しみである、が、ウーハーとツイーターをどうするか、それをどのように検証するか、まだいい案が浮かばない。


(「i氏山荘(5)圧巻ASHIDAVOX、755E GOLDEN8 CD408 403A 他を圧倒 」 おわり)


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コメント 10

いちあい

ご馳走様です!

JOB225使い
by いちあい (2014-05-26 20:46) 

AudioSpatial

いちあいさん、お立ち寄り、ありがとうございます。アハハ、「ご馳走様」は、美味しかったのか、膨満感か、微妙ですねー。でもこの「美濃紙SP」には驚きましたよ。私の「最終アンプ」ならぬ、この手の「最終スピーカー」ですね(笑)。そのうちJOB225で鳴らしてみたいです。
by AudioSpatial (2014-05-27 03:43) 

お名前(必須)

コメント
by お名前(必須) (2016-05-03 21:58) 

七村

アシダボックス試してみたいです。先日オークションで8P-HF2を落札しましたが、ジャンク品でエッジの破れがあるのですが、何とか音出しが出来ればと思っています。商品はまだ届いていないのですがエッジの補修を参考にしたいと思います。8P-HF2については、ネットで調べても殆んど情報が無くどなたかご存知の方あれば教えてください。
by 七村 (2016-10-22 12:17) 

オカダ

茨城県に住んでいるものです。アシボックスのユニットでジャズを聞いています。6P-HF1は自作のダブルバスレフの箱に入れて、又、8P-HF1は1975年にビクターから販売したFB-5というバックロードホンに入れて両方ともフルレンジで300Bに真空管アンプで鳴らしています。特に8P-HF1とバックロードホンとの組み合わせもとても良いと思われました。
by オカダ (2016-10-23 11:42) 

I氏

七村さん、8P-HF2はダブルコーンですよね。私は聴いたことがないのですが、きっとHF1の高音を補うために開発されたのでしょうね。よかったら、音の傾向を教えてください。

by I氏 (2017-03-31 07:15) 

I氏

オカダさん、バックロードホーンだと、さらに低音が強化されますね。私もハセヒロのエンクロージャを持っているので、いつかやってみます。
by I氏 (2017-03-31 07:18) 

HPD315A愛用

超亀レスにて、失礼します。

アシダボックスはぜひ入手して、じっくり聴いてみたくてウズウズしてきました。
が、近頃はオークションにも出てこないので、手に入りませんね。
アシダ音響でも復活させる気はないようでして、残念。

ところで、HPD295AにHPD315Aと銘打ってしまったメーカー側の珍しい
ミスの件ですが、次のような事例がありましたので、魚拓に取りました。
https://megalodon.jp/2017-0707-2328-40/https://page.auctions.yahoo.co.jp:443/jp/auction/j440969465

これを見ますと、DEVONのHPD315A付属のスピーカー端子プレートに
HPD295Aとプリントされています。これを見ますと①組み立てている職人
がいい加減で検品体制も甘い②余った部品を流用したり欠品部品を他の
部品で代用したりしていた・・・ことが推察できます。

②に似た話ですが、モニターゴールドからモニターレッドに移行するときなど、
両者の過渡的な個体もあったようです。HPD時代は創業者が心臓発作で
3回も倒れたそうで、①の原因も捨てきれません。今となっては謎ですね。
by HPD315A愛用 (2017-07-07 23:52) 

I氏

HPD315A愛用さま、超・超亀レスですが、ありがとうございました。
by I氏 (2020-05-24 17:43) 

s.h.

記事内で美濃和紙と断言していますが、メーカーは公言していますか?

by s.h. (2021-06-12 13:29) 

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