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口伝(3)「最良の電源ケーブル」 Fケーブル・パラドックス [口伝・オーディオ萬之事 ~父から息子たちへ~]



      口伝・オーディオ萬之事 (くでんオーディオよろずのこと)
この日記は、父が息子に、オーディオについて語ったことを拾い集めた「拾遺集」です


今回は、父が昔考えた、Fケーブルのパラドックスの話をしておこう。
それを「Fケーブル・パラドックス」と名付けた。
ケーブル選びの本質的なことに気付くヒントを、パラドックスの形で表したものだ。


音がよくなるケーブルは存在しない

言い方を換えれば
すべてのケーブルは、必然的に伝送信号を劣化させる要素を持つ


オーディオ機器に使用する各種のケーブル類。

『なにも足さず、なにも引かず、「送り元」から「送り先」へ情報や電力を伝送する』

これが「ケーブル」の使命であり、理想である。
もし、「音がよくなる」ケーブルがあったとしよう。
そのケーブルは、「なにかを足している」か、「何かを引いている」。
もしくはその両方をやっている。

ケーブルはいかなる品質のものであっても音は劣化する
劣化が極小で検知不能なことはあっても、よくなることはあり得ない
電源ケーブルであれ、スピーカーケーブルであれ、ラインケーブルであれ、何であれ、「このケーブルは音がいい」と主張する人がいたとしよう。
こういった話の解釈(理解のしかた)は、「口伝(第1回)」で説明したとおりである。

『ある人が、あるオーディオ・システムの環境において、ある部分にそのケーブルを使用したところ、その人は「音がよくなった」と感じた』

と解釈しなければならない。
その音を別の人が聴けば、逆の評価になるかもしれない。
同じシステムの別の場所に使えば、違った評価になるかもしれない。
別のシステム環境では、推薦した人でさえ、こんなはずではなかった、と思う結果になる場合もある。

ケーブルはいかなる品質のものであっても、「なにかを足している」か、「何かを引いている」。
もしくはその両方をやっている。

その「何か」がどのような性質のものか、その量がどれほどのものか、そしてその影響が音に表れるのか否か、表れるならどのように。
これらのことは、すべてのケーブルに付きまとう。

これは、たとえ超伝導状態の「電気抵抗完全ゼロ」のケーブルであっても、この世に電気・磁気の法則があるかぎり、免れることはできない。
具体的には、本日の日記後半の「分布定数回路」の段で少し触れる。


ケーブルは、多かれ少なかれ音に何らかの影響を与える
そしてその影響にはシステムとの「相性」がある
ケーブルが、何かを足したり、何かを引いたり、その両方をやったりするかぎり、検知限界よりはるかに極小の変化であっても、また、訓練された耳の持ち主には感じられる変化であっても、多かれ少なかれ、音に何らかの変化を与えているはずである。

すべてのケーブルは、必然的に伝送信号を劣化させる要素を持つ。
そして、その「劣化させる要素」が、それぞれのケーブルによって微妙に異なる。
それによる音への影響も微妙に異なる。
それがいわゆる「相性」と呼ばれるものの正体なのだろう。
ある人が、「音がよくなった」と感じる場合、「そのケーブルは、そのシステムのその場所に使った場合、たまたま相性がよかった」ということになる。
ただし、「その人の感覚でそうであった」という話であり、他の人が聴いても同じ評価とはかぎらない。
つまり「音がいいケーブル」とは、ややこしい表現ではあるが、

『そのケーブルによる音の「劣化」が、システム全体の最終出口の音に影響を及ぼし、たまたま、ある人にはそれが「いい音」と感じられた』

ということである。

以上の話が、電源ケーブルであれ、スピーカーケーブルであれ、ラインケーブルであれ、デジタルケーブルと称するケーブルであれ、「ケーブルと音」に関して押さえておかねばならない最も基本的な話である。



「最良の電源ケーブルはFケーブル」のパラドックス

さて今日の日記は、『「口伝」ケーブル編』の最初として、まず「電源ケーブル」について考えてみたいと思う。
理想の電源ケーブルって何だろう、と思案して、「最良の電源ケーブルはFケーブル」というパラドックスに行き着いた。
壁コンセントから電源を取ることが大前提であるが、このパラドックスの結論は、

・電源ケーブルはFケーブルが基準であり、不都合な点が一つもない。
・Fケーブルを使えば何の問題もなし。

である。
この結論を受け入れられない人もいると思われるが、「受け入れがたい結論が導かれる」のが、パラドックスである。
しかしこのパラドックスには矛盾点がなく、結論は「まやかし」ではない。
パラドックスの結論には、「偽」の場合もあるが「真」の場合もある。
意外に思うかもしれないが、「Fケーブル・パラドックス」の結論は「真」である。


壁コンセントがパラドックスの入り口
このパラドックスは「思考実験」であり、実際に実行する話ではない。
しかし、まったく架空の話ではなく、その気になれば実際にやってみることが可能である。
またこの「実験」は極めて単純明快であり、誰もがその状況をイメージすることができるため、ごまかしや錯覚を仕込む余地はない。


*DSC_0201.jpg*DSC_0205.jpg
*DSC_0192.jpg*DSC_0190.jpg
                  <写真1:壁コンセントと屋内配線のFケーブル>
          **壁コンセント本体に接続されているFケーブルが10cmほど見える**




*Fケーブル・パラドックス1.jpg



<図1:分電盤からオーディオ機器への電源供給の基本的経路>







一般の家庭の場合、オーディオ機器への電源供給は、図1のような形となる。
屋内の分電盤から、壁のコンセントまでは、天井裏や壁裏を通ってFケーブルで配線されている。
その距離は、コンセントの位置や家の構造、広さにもよるが、数mから100m超といったところだろう。

「Fケーブル」は通称であり、正式には「VVFケーブル」(ビニール絶縁ビニールシース平型ケーブル)のことである。
「F」はFlat type(平型)のFであり、住宅の屋内配線用として一般的に使われている。

さて、その壁コンセントとオーディオ機器のインレットの間を、適当な電源ケーブルで接続することを考える。


さあ、変則的なことをやります(思考上)
普通は適当な電源ケーブルで、壁コンセントとオーディオ機器とを接続する。
それが当たり前であり、こういった一般的な家庭における状況が前提である。
この前提から、オーディオ機器における電源問題は、一般的には「電源ケーブルの選択」の問題に絞られることになる。

例外的には、壁コンセントの商用電源に「見切り」をつけて、商用電源とは完全に分離・独立した、ピュアなAC電源を新たに生成する装置(交流100Vの発電装置)を導入する方法もあるが、その話は今回の俎上にはない。


*Fケーブル・パラドックス2.jpg



<図2:「最良の電源ケーブルはFケーブル」のFケーブル・パラドックス>







ご注意:図2の中には、思考上、壁のコンセントを取り外し、コンセント本体からFケーブルを引き抜く作業などがあります。それらの作業には、電気工事士法により、電気工事士の資格が必要ですのでお含みおきください。あくまで思考上の話ですので、その点、誤解のないようにお願いいたします。


壁コンセントを外してFケーブルを引き出す
(①図):図2の①は、壁コンセントの表面プレートを外し、さらにコンセント本体を外して、Fケーブルごと手前に引き出した場面である(写真1参照)。
数10cmほど、Fケーブルを引き出すことができたとしよう。
そしてコンセント本体からFケーブルを引き抜いた。

(②図):②は、コンセント本体から引き抜いたFケーブルの先端を、オーディオ機器の電源入力コネクタ(インレット)の機器内側の端子に接続した様子である。
接続法は、端子の構造によって異なるが、いずれにせよ、「確実な接続」を行ったとする。


これ以上に最良の電源供給法はない
あくまで思考実験であるが、一般家庭のオーディオ機器にAC電源を供給する方法として、図2の②以上に良好なAC電源の接続法はない。
「電気的に良好な接続」についての話である。
なにしろ、音に何らかの影響を与える「電源ケーブル」が不要となり、使わないのであるから「最良」に決まっている。
本来は使用しなければならないはずの電源ケーブルによる劣化はゼロである。
この状態で出る音が、そのオーディオ機器の本来の音である。
そのはずであり、そうでなくてはならない。

ただし、もしかしたら、そのオーディオ機器に付属の電源ケーブルがあり、「このケーブルを使った場合が本来の音である」などといった能書が付いているかもしれない。
製造メーカーの立場から、それは当然のことだろう。
まず第一に、②のようなFケーブル直づけのような暴挙は想定外である。
機器を動作させるには、必ず、電源ケーブルを使用することを大前提としている。
そして付属品の電源ケーブルは、購入ターゲット層の最大公約数が「好ましい」と思うような音が期待できるようなものを付属させているはずである。
このことから、付属の電源ケーブルを使うように指定するのは、もっともなことである。

しかしあくまで、

ケーブルはいかなる品質のものであっても音は劣化する。
よくなることはあり得ない。

が、大基本である。
もし②のような電源接続をして、音が悪くなるような機器であれば、それはどこかに、また何かに、機器の設計・製作上の吟味不足があると考えざるを得ない。
そもそも音響的ハイエンド機器において、電源ケーブルによる「音づくり」など、製造メーカー自身がやってはならない、してはならない。
もちろんのこと、ユーザーが勝手に電源ケーブルを交換するのは、趣味であり道楽である。
他人がとやかくいう筋合いのものではない。
と、父は思う。

オーディオ機器の電源インレットに、最良のAC電源を供給したときに、最良の動作状態になる。

これが音響的ハイクラス・オーディオ機器の当たり前の姿であり、そのはずである。
ケーブル本来の使命(可能な限り、なにも足さない、なにも引かない)を放棄したような、キャラクターの強い電源ケーブルを敢えて使用して、音づくりをするようなオーディオ機器は、ここでの俎上にはない。

パラドックスの話に戻って(③図)。
さてさて、図2の③は、②の状態のまま、Fケーブルを慎重に引っ張ってみたら、どういうわけか1m~2mほど、無理なく引っ張り出せた、という状態である(普通、そのような長さの余裕があるわけはないが)。
そのおかげで、近くにあるオーディオラックの設置場所に納まった、としよう。


いよいよパラドックスの核心部
②と③とは、オーディオ機器の置き場所が少し違うだけで、電源の供給状況は同一である。
つまり③も、一般家庭のオーディオ機器にAC電源を供給する方法として、これ以上のやり方はない最良の接続法である。

さて核心。
そこで①~③のFケーブルとまったく同じFケーブルを使って電源ケーブルを作ってみる。
同じFケーブルがなければ、③の室内に引き出したFケーブルを切断して電源ケーブルを作ればよい。
電源プラグやインレットプラグは、一流メーカーの信頼性あるものを使ったとしよう。
思考実験である。
金に糸目をつける必要はない。
超ハイグレード、ロジウム、クライオ処理(*注:後段)など、気の済むまでの超一級品を使おう。
なになに、両端のプラグと、Fケーブルとの接続処理で合計100万円?
上等、上等、結構、結構。
両端のプラグがどうのこうのと、誰からも文句を言われないような、最上級のことをやってくれ。
遠慮はいらない。

ということで、最上級のプラグを選択し、Fケーブルとの接続は、最善の方法で完璧に行われたとする。
ネジ止めや、ハンダづけでなく、ピンポイント溶接を行ったのかもしれない。


Fケーブルで作った電源ケーブルを誰も「卑下」できない
さて、こうして作られた電源ケーブル。
③と④の状態を比較してみる。
③と④を見比べて、Fケーブルで作った電源ケーブルの音が「いいか、悪いか」を考えてみよう。
答えは明快である。

②や③と比較して、悪い点を指摘できない。
一つも悪いところがない。

電源プラクとインレットプラグの介在は、避けることができない必要悪である。
いかなる電源ケーブルも、両端に電源プラクとインレットプラグを装着しなければならない。
つまり電源ケーブル両端のプラグによる影響は、「影響がある」ということに関して、どのような電源ケーブルの場合も平等であり、比較の対象から除外できるだろう。
しかもこのFケーブルの場合は、この世に存在する「最高の品質」のプラグを、それぞれのオーナーが、気が済むまで吟味してセレクトしたものである。
Fケーブルとの接続は、ピンポイント溶接までしてある。
この世に、これ以上の品質・性能の両端プラグとその接続処理はないのである。

Fケーブル・パラドックスの結論について、これ以上の説明はいらないだろう。


図2の①~④に描いた「Fケーブル・パラドックス」から、

「Fケーブルで作った電源ケーブルには、音的にも、電気的にも、何一つ不都合なところがない」

という結論が導かれる。
音がいい、音がよくなる、などとは言っていない。
②③と比較して、必要悪の両端のプラグ以外に、何一つ悪いところ、劣るところがない、との結論である。
もちろん、使い勝手や見た目などは度外視している。


パラドックスの結論を否定できない
この結論を否定することは、すなわち、屋内配線に使われているFケーブルを否定するに等しい。
そうなれば、家庭におけるオーディオ機器の稼動そのものが成立しない。
分電盤から壁コンセントまでの屋内配線用Fケーブルの存在は必要悪であり、万人が甘受しなければならない義務のようなものである。


Fケーブルの電源ケーブルを薦めているわけではない
Fケーブルで作った電源ケーブルなど、使いにくくてしょうがない。
もちろん使う必要はないし、私は使わない。
ただし、先のパラドックスの段の冒頭の「最良の電源ケーブルはFケーブル」の「最良」は、つぎのような意味である。

Fケーブルよりも各種の電気的特性が優れたケーブルは山ほどある。
しかし高価なケーブルが、そのシステムのその場所の相性に合うかどうかは分からない。
その失敗を避けたいのであれば、「Fケーブル・パラドックス」の結論に従えばよい。

Fケーブルの電源ケーブルは、分電盤から壁コンセントまでの屋内配線Fケーブルの、そのままの延長と考えることができ、「間違いのない選択」と言える。
つまり、あれこれ迷い悩む人にとっては「最良」の選択である。

ちなみにFケーブルの単価は、メーカーや規格によって違ってくるが、10mあたり、500円~1000円程度のようである。



愚痴をちょっと
インレット不信
私は昨今流行(はやり)のように採用されている、オーディオ機器の電源受け入れ口のインレットを信頼していない。
差込む深さも浅いし、ケーブルをうっかり引っ掛ければ簡単に抜ける。
グラグラを何度も繰り返せば、少しづつ抜けてくる。
このことは高級品のインレットやコネクタでも大差はない。
「抜けやすいもの」を高級オーディオ機器に採用するなど、私の感覚では考えられない。
壁コンセントも引っ張れば抜けるが、こればかりはやむをえない。
壁コンセントを引き合いに出すのはフェアではない。
ケーブルを引っ掛けたときに、オーディオ機器が棚から落下しないよう、抜けるようになっている、なども言い訳にならない。
では、ガッチリ締め付けるようなメインアンプのスピーカー端子などは、どう説明するのか。

できることなら、オーディオ機器の製造メーカーが、国内一流ケーブルメーカーの標準的な電源ケーブルを十分吟味・試聴して、「過不足なし」のものを選び、機器直出し(コネクターなしで直にケーブルを出す)をしてもらいたい。
製造ラインの都合やコスト優先の普及機クラスであればインレットもやむをえない。
しかし高級オーディオ機器であればなおのこと、機器「直出し」を望みたい。

電源ケーブルを交換できる「選択の自由」よりも、オーディオ機器の電源受け入れ口のインレットなどの「接触部分」がない方がはるかに信頼感があり、音的にも安心できるのだが・・。


クライオ処理
熱して高温に曝す、冷却して低温に曝す。
それらの温度によっては、そのどちらにも、ケーブルの導体金属(銅)の物性の変化が起こるであろうことは想像できる。
たとえば極めて低い温度に冷却して、物性に何らかの変化が生じたとする。
その変化が、音的に良好な状態になると仮定しよう。
問題はその変化が、常温に戻ったときに残っているのか、元の状態に戻ってしまうのかである。
可逆的か非可逆的か、いずれにせよ、金属工学や冶金工学の基本的な話と思われるので、勉強すれば分かると思う。
興味があれば銅について調べ、その結果だけを教えてほしい。
銅の物性変化は可逆的と思っているが確認をしておきたい。
ただしオーディオケーブルにおける「クライオ処理」に、父はまったく興味はない。



ケーブルの本質
本筋に戻り、最初に話したように、

音がよくなるケーブルは存在しない。
言い方を換えれば、すべてのケーブルは、必然的に伝送信号を劣化させる要素を持つ。

さて、この根拠はどこにあるのか。
言い換えれば、ケーブルの正体はなにか。


*Fケーブル・パラドックス3.jpg



<図3:伝送信号を劣化させる要素とケーブルの正体>








一般的なケーブルを想定した2本の導体に、何らかの信号が流れる。
あるいは電力の電流が流れる、とする。
オカルトの世界でない限り、その導体には否応なく「抵抗」があり、「自己インダクタンス」があり、「線間静電容量」がある。
純度「99.」のコンマ以下に「9」がいくつ並ぼうが、結晶の大きさや性質がどうであろうが、クライオ処理をしようがしまいが、これらの成分は必ず付きまとう。
(例外として超伝導状態では「抵抗」が完全にゼロになる)

当然ながらそれらの成分は、ケーブルの端から端まで、まんべんなく一様に分布している。
そのため、ケーブルの電気的性質は、抵抗「R」、自己インダクタンス「L」、静電容量「C」を使った「分布定数回路」という等価回路で表すことができる(図3)。
平たく言えば、ケーブルの導体には多かれ少なかれ「抵抗」があり、直線であってもコイルの性質「インダクタンス」があり、おまけに2本の導体が寄り添っているため「コンデンサー」の性質まで持つ。
2Wayとか3Wayとかのスピーカーシステムのネットワークに興味がある人にはお馴染みの単位、「R」であり「L」であり「C」である。

非常にざっくりとしたところであるが、オーディオ用の普通のケーブルの1mあたりのそれらの値と単位は、

抵抗R: mΩ(ミリオーム)
自己インダクタンスL: pH(ピコヘンリー)
静電容量C: pF(ピコファラッド)

といったあたりのオーダーで表される。
こういったことからケーブルは、図3のような「R」と「L」と「C」の性質を持った「分布定数回路」で近似的に描き示すことができる。


ケーブルの導体には互いに反発する力が働く
また、一般のケーブルのような、2本の近接した平行導体に電流が流れると、それぞれの電流の向きにより、引き合う力、あるいは反発し合う力が働く。
2本線のケーブルの場合、普通は互いに逆向きの電流が流れるので、反発力となる。
2本線のケーブルを束ねて1本のケーブルとして使えば、その2本に同じ向きの電流が流れるので、引き合う力が働く。
反発であれ、引き合いであれ、その力を受けるケーブルの導体は、普通、ビニールやゴム系の材料で絶縁被覆されている。
極微の動きであっても、被覆材の性質によって、振動の状態は異なるだろう。

2本の導体に働く力は電流に比例するので、そこそこの電流が流れる電源ケーブルやスピーカーケーブルの場合は、微小とはいえ何らかの影響が出る可能性もある。
さらには、地磁気が存在するため、導体の電流と地磁気との作用による力も、さらに微小ではあるが働く。
ただし今回はそれらの力の大小や、その力による音への影響のあり・なしについては言及しない。
要点は、どのようなケーブルであっても、これらの力や、上段の「R」や「L」や「C」の影響を免れることはできない、ということである。
そのことをまず知っておく必要がある。

まあ、どのようなケーブルでも、オーディオ信号やデジタル信号、AC電源の電流などを流すと、いろいろ厄介な現象がくっついてくる。
安物ケーブルであっても、超高額ケーブルであっても、電気の原理はそれぞれの物性に応じて、分け隔てなく作用を及ぼす。

さあ今回は、これぐらいにしておこう。
お前たちは自適親父よりリッチだが、ケーブル選びに興味はないのか?

なに? 別に今の音にそれほど不自由してない?
お前がREVOXのテレコに使っている、赤白の細いRCAピンケーブルは、昔のビデオ録画器に付属してきたやつだぞ。
そのこと知ってるのか?何かの4トラテープが凄い、とかいってたけれど。


(口伝(3)「最良の電源ケーブル」 Fケーブル・パラドックス おわり)

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いちあい

これもまた大作ですね

経験的には
あ)電源ケーブルの交換により、複数の被験者が聞き分けられる再生音の変化が観測できることがある
い)この場合調音ツールとして利用できる

良い音になるとは 文学的表現と解釈しています[わーい(嬉しい顔)]
by いちあい (2014-06-16 19:44) 

AudioSpatial

いちあいさん、ご指摘、恐縮です。そのとおりだと思います。訓練された耳には、電源、ライン、スピーカーなど、どのケーブルも、多かれ少なかれ、それぞれのケーブル特有の「劣化要素」による付帯音や、その影響による音を聞き取ることができます。本文で一貫して主張している「すべてのケーブルは、何かを足しているか、何かを引いている。あるいはその両方」が、まさにそれです。結果的にそれが「調音ツーツ」になる、というわけですね。
今回の日記は、そういったことを理解して、ご指摘の「調音ツーツ」として有効に利用するなどのヒントになれば、との思いがありました。
いちあいさん、私のオーディオ部屋の壁コンセントは、写真のように残念ながら松下電工の3p標準品です。使ってほしい3pがあって指定したのですが、電気工事屋さんに、何んだかんだと結局は松下を使われてしまいました。交換も面倒なので、そのまま使ってます。
by AudioSpatial (2014-06-17 09:52) 

kchann

テープレコーダから本ブログにおじゃましました。
久々に聴いた分布常数。
確かにケーブル(電源であれスピーカであれ)で音変わります。
今回ふれられていませんが、今仕事でほとんど毎日スペアナ
(高周波)を覗いています。
かつての高城重躬さんではないですが部屋自体を鉛板でシールド
する必要があるかもしれませんね。
学生時代 雑司ヶ谷で下宿していましたのでかつてのSTAX本社へは
何度か足を運びました。
未だに建物はあるんですか。
15年ほど前に下宿はどうなっているのか?と近くまで行きました。
銭湯はマンションに変わり、雑司ヶ谷霊園まで行かないと
当時の記憶とマッチしませんでした。また遊びに来ます。
by kchann (2014-07-16 15:10) 

AudioSpatial

kchannさん、お返事が遅れて申し訳ありません。学生時代には雑司ヶ谷におられたとのこと、懐かしいですね。
かってのSTAX本社は、今は東京都有形文化財「雑司が谷旧宣教師館」として保存されているようですが、写真でみるかぎり、当時の緑に囲まれた落ち着いた風格は、失われているようです。俗に言う「ケバイ」印象で、がっかりし、訪ねてみる気も失せました(笑)。
現在は高周波関係のお仕事のご様子、「スペアナ使い」なんですね。
私は、オーディオのすべては、オームの法則と、感性の上に成立している、と思っていますが、よろしかったら、またぜひ、ご訪問ください。
ちなみにここでの「オームの法則」は、電気や物理の法則全体を象徴したものです。
ありがとうございました。
by AudioSpatial (2014-07-19 09:45) 

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